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お菓子な雑学『バグダッドの市場』

 2003年4月フセイン政権崩壊から14ヵ月余りにわたった米軍主導の占領統治は一応終結しイラク人の手に主権が戻った。
 バグダッドはチグリス川沿い、ユーフラテス川が最も接近して流れている所に位置している。紀元前三千年代にすでに都市として発達しイスラム文化の大中心地であった。トルコ、イラン、アラビア、地中海、を結ぶ古くからの隊商路として発達してきた。とくにスエズ運河が開通するまでメソポタミアに向かうヨーロッパの貿易品はダマスカス、アレッポを通ってバグダッドに集結していたが運河開通後その役をバスラに明け渡した。

 話は『千夜一夜物語』になるが、その中に「バグダッドの軽子と三人の女」という語りがある。荷運び人とひとりの美女の出会いからはじまって、三人の托鉢僧と二人の姉妹が、それぞれ、数奇な運命に翻弄される身の上話が延々と語られている。その話の中には商人の服装に身をやつしたお忍びの教主ハールーン・アル・ラシードが従者と共に話に加わるという筋書きになっている。8世紀末のアッバース朝はなやかなりし頃の国際都市バグダッドの繁栄の様が描かれている。
 冒頭のところで美女が軽子を雇い、食べ物、飲み物などをつぎつぎと豪奢に買い込むくだりがある。まずは果物屋でシャムの林檎、オスマンのまるめろ、オマンの桃、ナイルの胡瓜、エジプトのライム、スルタンの蜜柑とレモン、アレッポのジャスミン、天人花の実、ダマスカスの白睡蓮それとかみつれ、真紅のアネモネ、すみれ、石榴の花、水仙などを軽子の籠に入れ、つぎに肉屋でどっさり肉を買い込み、これも軽子の籠に入れる。さらに乾物屋の前で足を止め、乾し果実、ティハマーの乾しぶどうや巴旦杏、そのほかデザートに必要なあらゆるもの物を買い込む。

 「こんどは女はお菓子屋のところで立ちどまり、土製の大浅皿を買って、そのうえに、この店にある、ありとあらゆるお菓子を盛り上げました。つまり、透作りの果物入りパイ、麝香の匂いをつけた揚物、<シォボン菓子>、レモン入りパン、めろんの漬物、<ザイナブの櫛><貴婦人の指><判官のひと口菓子>、さらに、あらゆる種類の砂糖菓子などでございました。」(大場正史訳)

 買い物はさらにつづき香料商で珍しい名まえの香料、香水を買い、まだまだ、これから八百屋など、めくるめくような買い物が続く。


フッタ
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